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2011.06.14 Tuesday / - / スポンサードリンク

ここもまた、春の国。

見渡す限りどこまでも続く緑の丘の連なりに
ところどころぽつぽつと小さな樹が生えていた。

そんな風景の中、ゆるやかな丘のひとつで
彼は柔らかい草の上に仰向けに寝転んで
澄んだ空色をバックに流れる雲を数えていた。

「14ー、クッキーの形。
 15ー、ティーポットの形。
 16ー、紫リンゴの実の形…」

歌うように、呟くように、
小さく声に出しながら彼は数え続ける。
彼の隣に座った同じ種族の生き物は
そう言われればそう見えないこともないかな、
今のはちょっと苦しかったかな、等と思いつつ
数える声を聴きながら同じように雲を見ていた。

優しげな陽射しと穏やかな風が
二人の淡い色の毛皮ををそっとなでる。
一面の草原のさわさわと言う控えめな音に合わせて
真っ白な雲は次から次へと空を渡って行く。

「ねえ」

しばらくして、座っていた方がはじめて口を開いた。

「391ー、半房食べかけの赤ブドウ。
 392ー、星のなる樹に集まった鳥の影。
 393ー、えぇっと…翼を広げて尻尾を丸めた海の眠り竜!
 …え、今呼んだ?」

「いい加減、やめないの?」

おかしくてたまらないといった様子でそう言われ、
彼は雲を数えるのを止めて起き上がった。

「そうだね…そろそろ帰ってお茶の時間だ」

二人はお互いに笑うと、
先程から客が用事を済ませるのを待っている乗用獣のように
ひとつだけ空のその場から風に流れず留まっている
薄桃色の大きな雲に向かって飛び立った。

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